2008.11.30 東京11R ジャパンカップ G1

By admin On 11月 29th, 2008

 3世代のダービー馬が揃って参戦する今年のジャパンカップ。そのコース、距離とも同じジャパンカップは、それらにとって勿論最適な条件レースだと言えるだろう。しかし、精査してみるとそれぞれ不安要素も見え隠れしている。

 前走天皇賞で従来のレコードを0.7秒縮め、歴史的名勝負を僅かな差で制した名牝4ウォッカ。東京コースでは崩れておらず、最も悪い成績でも勝馬から0.2秒差の4着に敗れた前年のジャパンカップでのもの。そのレースも殿から追走で、1~3着馬は何れも上がり33.9秒の脚を使われては致し方ない。だが直線だけで追い込み、上がりはメンバー最速の33.6秒を繰り出してのレース振りは、現役強豪古馬達を相手に、負けて強しとの印象は残した。当時の鞍上は四位。切れるが折り合いに難のあるウォッカの戦法としては、ベターな選択だと考えてのこと。結果から見れば、その騎乗は過失行為と断言出来るが、再帰性のない競馬というゲームに於いて、その責任自体に意味はない。その本質だけを見逃さなければ良い。
 前週落馬負傷した武豊は、最終的にはこのレースの騎乗を諦めざるを得ない状態になってしまったが、それ以前に当レースは2メイショウサムソンに騎乗することを選んだ。ここに一つの疑問が湧く。4が歴史的名牝であることは、彼の眼にも間違いなく映っている筈。なのに手替わりを名手が選択したのは、四位がウォッカに強いた戦法理由と同じ、その気質にあるのではないだろうか。そう考えてみると、ヴィクトリアマイル、毎日王冠、そして天皇賞秋でも、道中僅かながらではあるが掛かった仕草にそれを見出せる。そして、そのエネルギーロスが結果として、全てのレースのゴール間際の最後のひと踏ん張りにマイナスとなって現れている。つまり、前走よりも更に400m距離が延びるここでは、不安要素が確実に増大することになる。武豊の降板は、暗にそれを示唆するものとして間違いない。今回4ウォッカの鞍上は岩田。当馬とは今年の安田記念でペアを組み、完勝に導いた騎手ではあるが、彼の当たりの強さが負に振れれば、前述の不安を増幅させ、4ウォッカはオッズに見合う確勝馬とは成り得ないと結論付けられる。

 では、9ディープスカイではどうか。前走は4に秒差なしの3着。3歳ナンバーワンの実力を如何なく発揮できたとは思う。前回折り合いに苦労していたが、元々はそれ程掛かる気質ではない馬。距離が延びれば、4よりこちらの方が上に来ても全く驚くことはない。ただ不安は鞍上四位の思考性向。多くのG1レースで勝利をもぎ取ってきた一流ジョッキーだとは思うが、2、3着も非常に多い面も併せ持っている。僅かに足りないレースパターンの多くは直線追い込むも交わせずといった内容である。先のウォッカもその父タニノギムレットの皐月賞も同じパターンだった。前回4に敗れたことで、今回更にその指向が強まることになる。つまり、道中これまで以上に溜める選択をするならば、ゴールで9が僅かに足りない場面は、一番考えておかなくてはならないケースだろう。よってこの脚質の馬に四位が騎乗した場合、前売り段階で一番人気にまで押し上げられている当馬を本線にすることはない。

 2メイショウサムソンは、不利だらけだった凱旋門賞を除けば、天皇賞春と宝塚記念ともに秒差なしの2着で年齢的な不安は感じられない。石橋守に手が戻るのも悪くはない。能力的にはここでも足りると思うが、5歳時には前年の覇者であったテイエムオペラオーやゼンノロブロイも敗れていることから、活力面での不安は残るし、やや淡泊な気性も兼ね合わせるとここに張るのも躊躇する。

 となると、消去法的に考えると残った有力馬は、13マツリダゴッホと15アサクサキングスに絞られることになる。このレースを逃げて勝ったのは、古いところでは日本馬勝馬第1号のカツラギエースであり、近年ではタップダンスシチーだけである。だから鞍上ルメールが魅力としても、逃げ一手を選択するのならば、15アサクサキングスが苦戦する確率は高い。果して逃げるかというケースも考えられるが、その戦法なくしては当馬が勝ち切る確率は格段に下がる為、何れを選択しても帯に短し襷に流しの感は否めない。ならば、むしろ逃げ馬を前に置いて進める13マツリダゴッホに食指は動く。中山競馬場での圧倒的なパフォーマンスと比較すると、13の東京コースでの実績は全然話にならないが、そこが盲点になることで、実力に見合う以上のオッズにはならないことは担保されている。強力な逃げ馬がいる時の先行脚質は、勝つ為の必要条件だと言える。特にこのレースではその特徴が顕著に表れやすい傾向にある。ならば、有馬記念で人気を集める前のここで13は最も妙味ある馬と考えられる。よって最終結論としての本線は13マツリダゴッホとしたい。

 レース結果

 回顧録

 1着馬以外は実績及び実力通りの結果となったレースだと思う。ただその1着馬が前走ハンデ重賞を勝ち上がって来たばかりの16スクリーンヒーローということに、結果が出た後でも驚きを隠せないだけである。勝たれてみれば活力溢れる4歳の社台生産馬で、馬主は社台の総帥吉田照哉氏、鞍上にデムーロとくれば一発あっておかしくはないが、このメンバーを見渡した時に、事前にピックアップすることは難しかったと言わざるを得ない。無論その思いは総意であり、単勝41倍という高配当がそれを物語っている。

 ただ9デープスカイや4ウォッカの敗戦はレース予想でも書いている通り、その不安要素が現実となっただけで、事前の段階でも確率は決して低くはなかった。そして現実として強力な逃げ馬がいなかったことが更にその不安点を増幅したことは間違いない。逃げるしか活路を見いだせない15アサクサキングスを控えさせたことがその遠因だが、鞍上のルメールにしては稚拙な戦術に見えた。1000m通過タイムが61.08秒、日本最高峰賞金のレースにしては平凡過ぎるタイムである。逃げ馬は肉を切らせて骨を断つ精神なくしては、決して勝利を得られない。その意味では、15は挑戦者であって欲しかった・・・。

 この結果は有馬記念が行われる中山コースでは当然替わるだろうが、その予想の段階で心して置かなければならない教訓として、1着馬以外はオッズに見合う確勝馬がいなかったという事実のみを記憶しておくことにする。