正直なところ、女王13ダイワスカーレットに死角はあるのだろうか?
7ヵ月振りの実戦となった前走の天皇賞秋では、久々で入れ込み、1000mの通過タイムは58.7秒のハイラップを刻みながらも、ゴール瞬間まで気力を振り絞り、ウォッカの猛追に抵抗した。デビューしてからおそらく一番悪い出来であり、通常のオープン馬ならバタバタになるところを、この名牝は心が折れることなく、闘争本能のみで凌いで見せた。むしろ、あのレースのゴール数メートル手前で完全に負けを覚悟したのは、鞍上の安藤勝己の方ではなかったか・・・。そして、その一瞬の諦めこそが、肉眼では捉えきれないほどの僅かな差でウォッカに敗れた主たる要因だったと思えてしょうがない。
しかし、それは数多の名馬の背を知る超一流ジョッキーにとっても、信じがたいものだったに違いない。今まで体験したことのない、勝負根性と競争能力の発露。その限界が見えない能力は、間違いなくここでも発揮されるとみるべきである。
有馬記念は牝馬にとって鬼門のレースである。86年以降メジロラモーヌ、マックスビューティ、サンエイサンキュー、イクノディクタス、ベガ、チョウカイキャロル、ヒシアマゾン、ファビラスラフィン、ホクトベガ、ダンスパートナー、メジロドーベル、エアグルーブ、フサイチエアデール、ファレノプシス、テイエムオーシャン、トゥザヴィクトリー、ファインモーション、スイープトウショウ、ウォッカと名立たる名牝達が敗れ去って来た。昨年の当レースに於いては、13ダイワスカーレット自身もその1頭である。
だから、冷静に考えればそこに張る価値など無い。しかし、有馬記念はお祭りである。この1年大金をつぎ込んでも破産することなく、新しい年を迎えることのできる境遇に感謝しつつ、この牝馬の最強馬としてのレース振りを純粋に見てみたいと思うのである。
レース結果
回顧録
最早誰もこの牝馬を倒すことは出来ない。13ダイワスカーレットは、スタートからゴールまで一度も他馬に譲ることなく駆け抜け、全ての有力馬を撫で切ってしまった。混戦の2着に来たのが、最後方に控えていた14アドマイヤモナークであったことが、その強さの全てを物語っている。
2500mという長丁場で、スタートから4ハロン全てに11秒台のラップを刻まれ、上がりを36.4秒でまとめ上げられれば、並みの一流馬では、到底歯が立たなかったということだ。肉を切らせて、骨を断つという言葉があるが、どの馬もダイワスカーレットの薄皮一枚さえも切れなかった。
有馬記念の37年ぶりの牝馬優勝馬となったが、近代競馬に於いて、現時点で現役最強かつ過去最強の牝馬であることは間違いない。正に新時代のヒロインと呼べる優駿である。
