メジロマックイーンのスタート直後の大斜行による失格処分の1991年、骨折後久々での出走であったトウカイテイオーがハイペースに巻き込まれ大失速した1992年、連対率100%を誇り、G12勝を含むその年の出走した全てのレースを制してきたビワハヤヒデが初めて馬群に沈んだ1993年、稀代の快速馬サイレンススズカが4角で脚を取られターフに散った1998年と悲哀に満ちたエピソードを交えつつかつては1番人気馬が最も勝つことが難しいG1レースとされたのがこの天皇賞秋である。
時は進みテイエムオペラオーが2001年一番人気でそのジンクスを破ってからオペラオーを含め5頭の馬が一番人気でこのレースを制し、今ではどちらかと言えば堅いG1の一つとして数えられる。
しかし、3歳時にこのレースを制したバブルガムフェローが充実の4歳時に一番人気で2着に敗れ、先に挙げたテイエムオペラオーも翌年の同レースで2着に敗れ、ゼンノロブロイも全く同じくこのレースを制した翌年に2着に敗れ去った例を見れば、このレースを連覇するのがいかに難しいことかが窺える。
その理由としては、諸説あるだろうが、1つ言えるのは、競走馬が自身の持つ競争能力の最高値を数年レベルでは持続できないことが挙げられる。競走馬もアスリートである以上、能力値は必ずどこかで頂点を迎え、それを過ぎると逓減していくのは自然の摂理なのである。レースを制した時が最高潮時とすれば翌年は前年レベルの能力を発揮し難いということであり、それは稀代の名牝ウオッカとて決して例外ではないということである。
ウオッカを管理する角居調教師は現時点でもウオッカが成長し続けており、その限界点を見てみたい気持ちがあると語っているが、2歳時から卓越した才能を披露してきた当馬の頂点がまだ先にあると仮定するのは前述の様にサラブレッドの常識では異質であり、馬券を買う立場からは少々危険な希望的観測の様に映る。
今年の7ウオッカを考えれば、過去の範に擬え、指定席としては2着がピタリと符号しそうな気がしてならない。
また、3歳時のダービーの鮮やかな勝ち方や昨年の歴史に残るてこのレースのイメージが強すぎて2400mまでならその能力を全評価してしまいがちであるが、下記のデータを見ればウオッカの距離に対する一つの疑念が湧く。
ウオッカの距離別成績
1600m 9戦【7-2-0-0】
1700~2000m 7戦【1-3-1-3】天皇賞(秋)1着
2100m以上 6戦【1-0-1-4】日本ダービー1着
上記のデータからはウオッカの最も得意とする距離はマイル戦なのは間違いない。今年のヴィクトリアマイルや安田記念の鮮やかな勝ち方、それと比較して休み明けとは言え昨年、今年と続けてゴール前甘くなった毎日王冠のレース振りを比べればその距離特性はイメージとしても顕著に違いが分かる。そう理由付ければ、昨年のこのレースでもゴールの瞬間の厳しさはウオッカ自身の得意距離ではなかったことが遠因している気がする。勿論圧倒的能力が距離の限界を打ち破って来たからダービーでも昨年の天皇賞でも勝てたのではあるが、昨年より一つ歳を経た今年のウオッカが昨年以上のパフォーマンスを演ずることができる保証はどこにもない。
むしろ全体としても6歳以上馬に良績がないこのレースで、一つ歳を取ったことはマイナス要因として考えたい。よって連単系の馬券を購入するなら、ウオッカを2着付けにした馬券を推奨する。
では、1着の可能性のある馬はどの馬になるか?
適性的には東京芝8戦6勝の10シンゲンに目が行く。しかし、当馬は6歳馬、先に挙げた条件からは強くは推せない。また前走ウオッカを破った3カンパニーも8歳ではとても買えない。
ならば残った馬は8キャプテントゥーレと15オウケンブルースリしかいない。特に8キャプテントゥーレはアグネスタキオン産駒。前年ウオッカに際どく迫ったダイワスカーレットとディープスカイがともにアグネスタキオン産駒であったことを考えればこの馬への期待は大きい。
ウオッカは確かに歴史に残る偉大なサラブレッドであることは間違いない。しかし、サラブレッドの栄華はあまりに短い。そして、その終わりはいつも突然に、あまりに呆気なく訪れるのが競馬の常識であり、繰り返されるサラブレッドの歴史であることは決して忘れてはならない事実なのである。